今の時期街を歩くと、明らかに新入社員だと分かる若者を見かけます。
ちょっと古い話ですが、昭和30年代、日本の高度経済成長期に盛んに行われた農村部から都市部への大規模な就職運動がありました。(当時集団就職と呼ばれていました)典型的な集団就職としては、農家の次男以降の子が、中学校や高校を卒業した直後に都市部の工場等に就職するために、臨時列車に乗って旅立つ集団就職列車が有名でした。
この列車昭和29年に運行が開始され昭和50年に運行が終了するまでの21年間に渡って、就職者を運び続けました。私の友達も何人かこの列車のお世話になったと言っています。
15歳位の子が親元を離れ自力で生活をしていく訳ですから、本人達の心境は・・・いろんな面で大変だったに違いありません。
ところで、当時集団就職とは別にひっそりと一人で駅に降り立つ少女達の姿が目撃されています。
家出娘と呼ばれる少女達です。
都会への憧れと希望の生活を夢見て上京するのでしょうが、その行く末は一般の人達から見れば惨めな状況に置かれることが多かったようです。
この少女達を上手に取り込んでいった者達がいます。ヤクザと呼ばれる者達です。
ある事件がきっかけとなって、この少女達の実態が新聞に掲載されたことがありました。
どうして身も心も捧げ貢ぎ尽くすようになったのか?当時の警察での事情聴取によると、少女達は口々に「私の話をあんなに真剣に長いあいだ聴いてくれた人は今までにいなかった、このお兄ちゃんの為なら何でもする・・・」と言い放っています。「どうして?」の問いに「私は田舎にいた時から誰にも相手にしてもらえなかった、両親は仕事仕事で私を怒ってばっかり・・・友達も先輩も全然相手にしてくれないし・・・嫌になって家出した。駅に降りてあまりの人の多さと人への無関心さに心が傷つきかけた時にお兄ちゃんに声をかけてもらった。喫茶店で食べたこともない美味しいケーキをご馳走になって、その日泊まる所まで面倒を見てくれた・・・こんな優しい人に出会ったことが無かった。だからこのお兄ちゃんの言うことは何でも聴いて、一生懸命にやろうって決心したんだ。」と答えたそうです。
全ては計算されていて思惑通りの展開ですが、少女達の心理を実に巧みに利用した手法です。
そう言えば、一流と言われる苦情処理を専門とする方々の話を聴くと、殆どの方が「自分は殆ど喋りません、相手の話を丁寧に聴いているだけです」と言っていました。
相手の話を聴いてあげるという行為だけで、心を捉えさらにはその生き方にまで影響を与えることができるのだと思うと、疎かに出来ない・・・一寸恐い気さえしますね。
下手な喋りで疲れるより、黙って聴いて上げる方がコミュニケーションは深まるのですね。
今も昔もこれからも・・・。
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藤吉 (月曜日, 21 4月 2014 00:05)
私もこの列車のお世話になりました。懐かしい思い出です。